不動産の相続は、留意点が多く、手続きに複雑さを感じている方が多いでしょう。
とくに、数次相続は手続きが難しくなっているため、事前にポイントを把握しておくことが大切です。
そこで今回は、不動産相続で知っておきたい「数次相続」とは何か、注意点や手続きの方法をご紹介します。
不動産相続で知っておきたい「数次相続」とは何か
数次相続とは、すでに起きている相続の手続き途中で相続人の1人が亡くなり、次の相続が発生することです。
典型的な事例として、年齢の近い夫婦が立て続けに亡くなったケースが挙げられます。
よく似た言葉に「代襲相続」や「相次相続」がありますが、これらの違いがよくわからない方もいるでしょう。
そこで、相続の種類ごとに特徴をご紹介します。
数次相続と代襲相続の違い
代襲相続とは、本来相続するはずだった相続人が被相続人より先に亡くなっており、推定相続人の代わりにその子が相続権を取得することです。
数次相続との違いは、相続人が亡くなるタイミングにあります。
代襲相続が発生するのは、被相続人より先に相続人が亡くなっているときです。
一方、数次相続は被相続人が亡くなった後で、かつ遺産分割協議などが終了する前に相続人が亡くなったときに発生します。
それぞれ発生タイミングが異なるので、混同しないよう注意しましょう。
数次相続と相次相続の違い
相次相続とは、短期間のうちに複数の相続が発生する状況を指します。
数次相続との違いは、相続人の死亡時期が「相続税申告を終えた後かどうか」です。
遺産分割から相続税の申告まで終えた後に、2回目の相続が発生したときは「相次相続」となります。
なお、相続税の申告では「相次相続控除」が適用可能です。
相続が発生してから10年以内に新たな相続が起きたときには、一定の要件を満たして、相続税の控除が適用されます。
注意点として、相次相続控除を適用するには、2回目の相続における被相続人が、1回目の相続で相続税を納めていなければなりません。
制度を効率良く適用できれば、短期間で相続が発生したときの税負担を抑えられるでしょう。
不動産相続で知っておきたい数次相続の注意点
不動産を数次相続するときには、いくつか注意点を押さえておく必要があります。
何も知らずに不動産を相続してしまうと、税負担が重くなるなど損をするおそれがあるでしょう。
事前に押さえておきたいポイントは、以下の3つです。
注意点①相続税申告と納税義務は引き継がれる
原則として、1回目の相続人に課せられた相続税申告と納税義務は、2回目の相続人に引き継がれます。
相続権を引き継ぐときに納税義務も引き継がなければならないため、忘れずに申告をおこなう必要があります。
不動産相続時には誰が納税者か、親族間で揉めごとが起こりやすくなっているので、あらかじめ相続人を明確にしておくことが大切です。
相続税の申告・納税期限は、相続を知った日の翌日から10か月以内となっています。
期限を過ぎると、ペナルティの対象となり、余計な出費が増えてしまいかねません。
提出書類には発行まで時間がかかるものもあるので、早めに準備を進めておくのがポイントです。
注意点②相続税の申告期限は延長される
数次相続では、相続税の申告期限が延長されます。
相続税の申告予定者が納税前に亡くなったケースでは、申告予定者の死亡を知った日の翌日から10か月以内にまで延長されるのが一般的です。
注意点として、申告の延長は2回目の相続における相続人のみとなっているため、1回目の相続では延長されません。
存命の一次相続人については、従来どおり期限内に申告・納税を済ませる必要があります。
また、数次相続でも基礎控除額は変わらないのが原則です。
法定相続人が増えるほど控除額は大きくなるので、自身のケースではどうか確認しておきましょう。
相続税の基礎控除額は、以下のように計算します。
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
法定相続人の数を当てはめ、大まかな相続税を把握しておきましょう。
注意点③それぞれの相続で相続放棄の手続きがおこなえる
相続放棄とは、被相続人の財産を放棄する手続きです。
すべての財産が対象となっており、一部のみを放棄する手続きはおこなえません。
そのため、借金などマイナスの財産だけでなく、不動産や預貯金といったプラスの財産も放棄する必要があります。
数次相続であっても、相続放棄の手続きは可能となっていますが、相続ごとに相続権があることを押さえておかなければなりません。
とくに、第2相続の相続人は、1回目と2回目の相続権を併せ持つため、それぞれについて「相続放棄」または「限定承認」が可能です。
不動産相続で知っておきたい!数次相続になったときの手続き方法
不動産を数次相続するときには、以下の手順を踏みます。
手続きの方法は、全部で3ステップとなっているので、事前に確認しておきましょう。
手続き方法①相続人を確定させる
不動産を相続するための遺産分割協議は、相続人全員でおこないます。
相続人が1人でも欠けていると、その分割協議は無効になってしまうので注意が必要です。
なかでも、数次相続は第1相続と第2相続の相続人全員を確定させなければなりません。
相続人を確定させるには、被相続人の出生から死亡までが記載された戸籍謄本を取得するのが有効です。
相続人が把握できたら、相続の順位を明確にしておきましょう。
故人の配偶者は、常に法定相続人となるため、優先的に不動産の相続が可能です。
次に故人の子ども・父母・兄弟姉妹の順となっています。
第1順位の相続人がいなければ第2順位の方が相続人となり、第2順位の相続人がいなければ第3順位の方が相続人となるのが原則です。
不動産を相続するときには、誰がどの配分で所有するのか明確にしておくことをおすすめします。
手続き方法②遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議が成立したら、内容をまとめた書類を作成しなければなりません。
不動産を数次相続するときの遺産分割協議書は、「1つにまとめる方法」と「相続ごとに別で作成する方法」があります。
どちらも被相続人に関する記載と相続人の署名が必要になるので、忘れずに作成しましょう。
注意点として、2回目の相続では被相続人の氏名欄に「相続人兼被相続人」と記載しなければなりません。
数次相続において立場が違うケースでは、その旨を記載する必要があるため、通常の不動産相続とは異なります。
手続きの混乱を避けるためには、遺産分割協議書を1つにまとめるよりも別で作成したほうが良いでしょう。
手続き方法③相続登記をおこなう
遺産分割協議書の作成後には、相続登記の手続きをおこないます。
手続き方法は、申請書類を用意して法務局に出向くのが一般的です。
相続登記に必要な書類として、相続人の戸籍謄本や住民票の写し、印鑑証明書などが挙げられます。
なお、数次相続では中間省略登記の方法が選択可能です。
中間の相続人が単独相続であるケースなら、1回の申請でまとめて登記がおこなえるため、費用の削減が見込めます。
不動産を数次相続する予定がある方は、中間省略登記ができないか検討してみると良いでしょう。
まとめ
数次相続とは、すでに起きている相続の手続き途中で相続人の1人が亡くなり、次の相続が発生することです。
注意点には、相続税申告と納税義務が引き継がれることや申告期限が延長されることが挙げられます。
数次相続の遺産分割協議書は、1つにまとめる方法と相続ごとに分ける方法があるので、状況によって判断していきましょう。