不動産を購入するときに、買い戻し特約の付いた物件を見た方もいると思います。
しかし、買い戻し特約とはどのようなものか良くわからず、購入するかどうか迷ってしまう方は少なくないでしょう。
今回は、不動産購入における買い戻し特約とはどのようなものか、買い戻し特約を付けるメリットや注意点についてご紹介します。
買い戻し特約とは
買い戻し特約の付いた物件を購入するか決めるためには、まず買い戻し特約とはどのようなものか知る必要があります。
ここからは、買い戻し特約とはどのような特約なのかご紹介します。
売買契約に付ける特約
買い戻し特約とは、不動産の売買契約の締結にあたって付加する、契約解除の特約です。
一定の期間、売主が代金額および契約の費用を買主に返還すれば、売買契約を解除して対象の不動産を取り戻せる内容となります。
買い戻し特約を付けるケースとして良くみられるのが、自治体や公共機関による宅地分譲事業です。
買主が、取得した土地に一定期間内に住宅を建てなかったときには、買い戻し特約が付加されていると、自治体が分譲した土地を買い戻すことが可能です。
ほかには、住宅は建てたものの、建てた住宅に買主自らが居住していないケースでは、買い戻し特約によって自治体が土地を買い戻せます。
さらに、取得した土地を一定の期間内に転売したときや、貸付したときは、買い戻し特約の対象です。
なお、買い戻し特約には期限が定められており、最長で10年となっています。
所有権移転登記と同時に登記する
買い戻し特約は、所有権移転登記と同時に登記する必要があります。
民法第581条にもとづき、所有権移転登記と同時に買い戻し特約を登記すれば、買い戻しを第三者に主張できるようになります。
債務弁済の担保
買い戻し特約を付けるケースとして、買い戻し特約を付けて不動産を譲渡して、債務弁済を担保するために利用することがあります。
これは売渡担保とも呼ばれています。
債務弁済とは、債権者が債務者に対して請求する債務を、債務者が履行することです。
債務者は債権者との契約に従い、期日までに利息を含めた金額を返済して弁済を実行します。
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買い戻し特約の注意点
買い戻し特約にはいくつかの注意点があるので、それを知っておくと対応に困らずに済むでしょう。
ここからは、買い戻し特約の注意点についてご紹介します。
最長10年
買い戻し特約の注意点の一つが、定められた期間がある点です。
買い戻し特約では、買い戻し期間を定めることができますが、最長で10年までしか設定できません。
もし10年以上の期間を定めていたとしても、10年となります。
例として、買い戻し期間を20年と定めて契約していたケースでも、10年に短縮されてしまうので注意が必要です。
また、買い戻し特約において、買い戻し期間を定めていないときは、自動的に5年になります。
さらに、買い戻し期間はあとから変更ができない点は注意点です。
売買契約時に買い戻し期間を決めたら、あとから変更したり、延長したりすることはできません。
もう一つの注意点として、買い戻し特約は所有権移転登記と同時に登記を申請する必要があります。
買い戻し特約は不動産売買契約に付随した特約なので、売買契約と同時に特約の内容を取り決めることが重要です。
買い戻し金額や買い戻し権の行使期間を定めて、所有権移転登記をおこなうのと同時に、買い戻し特約の登記を申請しましょう。
買い戻し特約の登記では、以下の内容を登記事項として登記します。
●買主が支払った金額
●契約費用
●買い戻し期間
買い戻し期間については、定めがあれば記載しますが、定めがなければ記載する必要はありません。
売却が困難になる
買い戻し特約が付加されている不動産は、売却が困難になる注意点があります。
買い戻し特約付きの不動産を購入すると、買い戻し行使期間が10年と定められていたら、10年間は売主によって不動産を買い戻される可能性があります。
購入した買主は、買い戻し行使期間が満了となるまでの間、いつ買い戻しされるかわからず、不安な状態が続くでしょう。
買い戻し特約付き不動産を購入しても、買い戻し行使期間が満了するまで、所有権が確定しない不安定な立場にあります。
そのため、買い戻し特約付き不動産は買主が見つかりにくく、相場より安い売却価格となる可能性があります。
買い戻し特約の登記は抹消手続きが必要
買い戻し期間が満了しても、買い戻し特約の登記は自動的に抹消されないので、残ったままになるのは注意点の一つです。
買い戻し特約が残ったままだと、買主を見つけることが難しいでしょう。
買い戻し期間が満了になっても、買戻権者である売主から連絡が来ることはありません。
忘れずに抹消登記をおこなうようにしましょう。
以前は買戻権者である売主と、不動産所有者である買主が共同で抹消登記申請をおこなう必要がありました。
しかし、令和5年4月1日以降は、売買契約から10年を経過した買い戻し特約については、不動産所有者が単独で申請をおこなうことが可能になっています。
買い戻し特約抹消登記をおこなうときに必要な書類は「買い戻し特約抹消登記申請書」で、司法書士に依頼するなら「委任状」が必要です。
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買い戻し特約を付けるメリット
買い戻し特約を付けて不動産を売買するメリットを知っておくと、売却するときや購入するときに参考になります。
ここからは、買い戻し特約を付けるメリットにはどのようなものがあるかご紹介します。
不動産を手放さないで済む
買い戻し特約を付けると、不動産を手放さないで済むメリットがあります。
不動産を一時的に手放しても、将来的に買い戻すことが可能です。
一般的な売却では、一度売却してしまった不動産を再び買い戻すことは難しいでしょう。
しかし、不動産の所有が難しくなって売却することになっても、買い戻し特約を付けておけば、手放さずに売却金を手に入れることができます。
つまり、買い戻し特約を付けて売却するのは、不動産を担保に、一時的に借金をしている状態といえるでしょう。
さらに、買い戻し特約は実際に登記をおこなうので、当事者同士の約束だけでなく、第三者に対しても効力を持っている点はメリットです。
もし買主が売却してしまったとしても、元の売主はその第三者に対して不動産を買い戻す権利を主張できます。
転売防止
買い戻し特約を付けるメリットとして、転売防止の効果が期待できます。
自治体や公共団体が宅地開発事業や整備事業をおこなうときに、分譲する不動産に利用目的などの条件を付けて販売するケースが一般的です。
しかし、なかにはその分譲した不動産を購入したものの、利用目的などの条件を守らないで転売してしまう買主がいます。
そのときに、買い戻し特約が付いていれば、売主である自治体や公共団体が不動産を買い戻すことが可能です。
融資の担保
買い戻し特約を付けるメリットには、融資の担保となる点があります。
不動産を売却して得た代金を融資額として、その金額を不動産の買主に全額返還したときには、不動産を取り戻せる契約を結ぶことが可能です。
もし売主が融資額の返済ができなかったら、担保となった不動産はそのまま買主の所有となります。
以前は、買い戻し特約を融資の担保とする方法はメジャーでしたが、近ごろではあまり使われなくなっているようです。
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まとめ
買い戻し特約とは、一定期間内に売主が代金額および契約の費用を買主に返還すれば、売買契約を解除して不動産を取り戻せるものです。
買い戻し特約の注意点は、期間が最長10年である点、買い戻し特約が付加されていると売却が困難になる点、買い戻し特約の登記は抹消手続きが必要な点です。
不動産売買に買い戻し特約を付けると、不動産を手放さないで済む、転売を防止できる、融資の担保になるメリットがあります。

朝日住宅 メディア編集部
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