不動産を手放す場面では、状況によって「競売」という特別な売却手段を取らざるを得ない場合があります。
競売は、裁判所が関与する強制的な手続きで、通常の売却方法とは進め方や条件が大きく異なります。
とくに、任意売却との違いや、それぞれのメリット・デメリットを正しく理解しておくことが大切です。
この記事では、不動産競売の基本的な仕組みや注意点、手続きの流れについて詳しく解説いたします。
不動産売却における競売と任意売却の違い
不動産の売却を検討する際、「競売」や「任意売却」という言葉を耳にすることがあります。
これらの手続きは、住宅ローンの返済が困難になった場合に選択される方法ですが、それぞれの特徴や違いを理解することが重要です。
以下では、競売とは何か、任意売却との違い、そして競売が最終手段となる理由について詳しく解説いたします。
競売とは裁判所の権力を用いた強制的な売却手続き
競売は、債務の滞納を理由に債権者が裁判所へ申し立て、裁判所の権限で不動産を強制売却する手続きです。
債務者の意思は反映されず、手続き全体を裁判所が主導します。
また、手続きは評価・公告・入札・配当の順に進行します。
公告期間は原則四週間以上で、公告後の期間入札で最高価申出人が決まり、売却代金は配当順位に従って債権者へ分配されます。
物件は、現況有姿で引き渡されるため内覧が難しく、買主はリスクを織り込んで入札額を抑えがちです。
結果として、市場価格を大きく下回る落札になりやすく、債務者にも不利な結果を招くおそれがあります。
さらに、固定資産税が滞納されたまま出品される例も多く、落札者が未納税額を引き継ぐ恐れがある点を理解しておきましょう。
農地や市街化調整区域の物件は、用途制限で入札者が限られ、価格がさらに下振れしやすくなります。
なお、競売開始決定と同時に給与や預金が差し押さえられることもあり、生活費が逼迫するリスクも看過できません。
任意売却との仕組みや目的の違い
任意売却は、債務者が債権者の同意を得て市場で物件を売却する方法です。
販売時期や条件を調整できるため、市場価格に近い金額での成約が期待できます。
また、高値売却によって残債を圧縮しやすく、債権者も迅速かつ高額な回収を見込めるため利害が一致します。
周囲に事情が知られにくく、精神的負担が軽減されるほか、内覧や住宅ローン利用が可能なため、買主層が広がり早期成約につながるでしょう。
さらに、任意売却が成立すると抵当権は同時に抹消され、買主の権利関係も明確になる点もメリットです。
近年は、リースバック型の任意売却も普及し、売主は住み続けながら資金繰りを立て直す選択肢が広がっています。
ただし、買戻し特約の期限や賃料水準には上限があり、契約書を専門家と詳細に確認することが大切です。
そのため、金融機関との協調が鍵となります。
ローン返済が滞った際の最終手段としての競売
返済が数か月滞ると、金融機関は督促を経て期限の利益を喪失させ、最終手段として競売を申し立てます。
競売が実行されれば退去が必要となり、経済状況も公開されるため、社会的ダメージが大きくなるかもしれません。
また、3か月連続の滞納を境に金融機関の専任部署が介入するケースが一般的で、ここを過ぎると競売回避が難しくなります。
さらに、延滞が発生したら一部入金やリスケ相談で誠意を示せば、信用情報への長期ダメージを回避できる場合もあります。
ただし、開札前なら任意売却に切り替える余地が残るため、滞納を自覚した時点で弁護士や専門業者へ早期相談することが重要です。
なお、住宅ローンの無料相談窓口を設ける弁護士会や自治体もあるため、活用を検討してください。
競売になった際のデメリット
不動産の競売は、住宅ローンの返済が困難になった際に避けられない手続きですが、多くの不利益を伴います。
売却価格が市場価格より安くなる傾向
競売による売却価格は、市場価格の6〜8割にとどまることが多いとされています。
内覧不可や情報不足、契約不適合責任が適用されない点が入札額を下げる主因で、融資が付きにくい物件は現金買いに限定されるためさらに価格が下落します。
また、不動産流通推進センターの統計では、2024年度の平均落札率は市価の67%にとどまりました。
なお、落札価格が低いまま確定すると売却後も残債が残り、自己破産を検討せざるを得ないケースもあります。
プライバシーが守られにくくなるリスク
物件情報は、裁判所の公告や専用サイトで公開され、現地調査で裁判所関係者が出入りするため、近隣に事情が伝わりやすくなります。
さらに、ネット上の情報は半永久的に残る可能性があり、将来の転居や就職に影響する恐れもあるため注意が必要です。
くわえて、地元紙の公告欄や法務局の閲覧により事情が近隣へ伝わり、子どもの学校で噂になる二次被害の報告もあります。
所有者側の立ち退きが必要になる場合もある
落札後は、新所有者が引き渡しを求める権利を持ち、応じなければ強制執行により立ち退きを命じられることがあります。
また、任意売却であれば引っ越し時期や費用の相談が可能で、引越費用や残置物処理費の交渉余地もあるため、早期の検討が望まれます。
さらに、明け渡し命令が出ると自力救済は認められず、執行官の立会いで家財が移動され追加費用が発生する点にも注意してください。
なお、明渡猶予が認められず強制執行となれば、執行費用や家財の保管料で数十万円の負担が上乗せされます。
競売になった際の流れ
競売に至るまでの流れを理解し、適切な対応を取ることが資産を守るうえで重要です。
ローン滞納による督促状の送付
滞納1か月で金融機関から督促状が届き、2か月超で期限の利益喪失通知が送付され、残債の一括返済を求められます。
その後、保証会社が代位弁済をおこなうと債権が移り、競売開始までの猶予はわずかです。
さらに、信用情報に遅延履歴が登録されるため、ほかのローンやクレジット契約にも影響が及ぶ点にも留意してください。
また、期限の利益喪失後は、延滞損害金が年14%前後で膨らむ金融機関もあり、早期の任意売却交渉が費用軽減につながります。
代位弁済通知が届いた後の対応
代位弁済通知が届いたら、まず保証会社に返済計画を提示し、任意売却の承諾や残債の分割返済を交渉します。
さらに、弁護士や不動産の専門家に同席を依頼すると交渉が円滑になり、売却価格の根拠となる査定書や収支プランを示すと合意形成が早まります。
なお、税金や管理費の滞納がある場合は、売却代金での精算方法を事前に協議し、差押えを解除しておく必要があります。
保証会社との交渉では、給与天引きなど現実的な返済計画を提示すると合意が得やすく、生活再建への配慮も評価されます。
売主目線での競売進行とその心構え
競売開始決定通知書が届くと物件は差し押さえられ、執行官らの調査を経て3点セットが公開されます。
以後は、手続きを停止できないため、次の住まいの確保や荷物整理など、具体的な準備を進める必要があります。
また、落札後の強制立ち退きに備えて住宅支援制度や引越補助金を調べ、生活の空白期間をつくらないよう計画しましょう。
さらに、落札後は自治体の住宅セーフティネットやUR賃貸の優先枠を活用すれば、引越し費用を抑えつつ住まいを確保できます。
なお、開札日に落札者が現れない場合でも再入札がおこなわれるため、手続きが長期化しやすく精神的負担が増大しやすい点も理解しておきましょう。
まとめ
競売による不動産売却は、手続きの自由度が低く、希望条件での売却が難しい点に注意が必要です。
市場価格を大幅に下回る金額での落札や、情報公開によるプライバシーの問題が発生するリスクもあります。
こうした事態を回避するには、早めの相談と適切な対処が不可欠で、自身に合った売却方法の選択が重要です。

朝日住宅
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